こんにちは。「護りたい。その想いを護る。」株式会社ゼストのプロダクトマネージャーを担当している川添です。
2024年3月のフルリニューアルを進めているあいだ、水面下でじっくりことこと温め続けていた新サービス「ZEST RRM」をついにリリースしました。
プロダクト完成前からすでに多くのお客様から導入の決定をいただいているということで、本当に嬉しい限りです。全社一丸となって臨んだこの新サービス「ZEST RRM」について、プロジェクトを振り返りながら「なぜ生まれたのか」「ZEST RRMでできること」をPdM目線でご紹介しようと思います。
背景
在宅医療・介護は私たちひとりひとりが安心して暮らしていくために重要な地域サービスです。一般社団法人全国訪問看護事業協会の調査によると、2024年の全国の訪問看護ステーション稼働数は17,329件にのぼり10年前の2.3倍まで増えています。訪問介護についても厚労省調査では35,468件と微増を続けています。しかし、一方で廃業や倒産も増え続けています。SNSを開けば、地域によって競争が激化している様子が見て取れます。
訪問看護・介護ステーションが存続できることはその事業所だけの問題ではなく、事業所のケアを必要としている利用者と地域にとっても死活問題です。私たちが「収益を最大化するためのプラットフォーム」としてできることはなんなのかを考えた時に浮かび上がってきたのが「地域連携の強化」、一般業界でいうところの営業活動に関連する課題でした。
私たちゼストの顧客である在宅医療・介護業界の皆様は、訪問サービスを必要とする利用者のご自宅へ訪問し、看護や介護などのサービスを提供しています。その利用者にはどのようにつながるかと言うと、「ケアマネジャー」や「医療ソーシャルワーカー」からの紹介がメインです。
サービス事業所は利用者やご家族が選定してもいいのですが、要介護度に応じた単位数、必要なサービスを提供できる体制があるかなど、その業界に精通していないとわからない情報があるため、制度や業界に詳しいケアマネジャーや医療ソーシャルワーカーの存在が欠かせません。
つまり、在宅医療・介護事業所が存続するためには「ケアマネジャー」や「医療ソーシャルワーカー」との連携を強めておくことが非常に重要なのです。
地域連携強化の課題
ここで、訪問看護・介護ステーションが地域連携を強化するにあたって何が課題になっているのか、顧客ヒアリングで伺った声を元に整理してみます。
課題①いつ、どの連携先にアプローチすべきかの計画を立てにくい
訪問看護・介護ステーションの現場スタッフは、基本的に訪問に出かけていて非常に多忙です。さらに、利用者の状況は日々刻々と変わるため、リスケジュールやキャンセルなど、先々の予定を読めないシーンが多々あります。
そうした流動的な日々の中で、「どのケアマネジャーにいつ会いに行くべきか」「どの医療ソーシャルワーカーに誰が会いに行くべきか」を把握して計画を立てるのは至難の業です。さらに、スタッフは常に移動しているので訪問先からの移動時間を加味しなければなりません。その結果、訪問サービスの方がおろそかになったり、それを危惧した現場からの反発があったりと別の課題を生む原因にもなっています。
課題②ケアマネジャーや医療ソーシャルワーカーの情報が一元化されない
連携先の方々の情報を得てもストック情報としてどこにも残っていないこともあるようでした。理由として、在宅医療・介護業界では日々のサービス提供の記録をカルテや介護ソフトに書き込むのですが、ケアマネジャーや医療ソーシャルワーカーに関する情報を拡充する場所は意外とないのです。
また、仮にあったとしてもステーションにとっていわば公的な記録になりうるカルテや介護ソフトの中に、ケアマネジャーや医療ソーシャルワーカーの個人名を出しながら「どういった傾向があるか」「何を重視するか」という情報を書き込むのは違和感がありそうでした。
その結果、ケアマネジャーや医療ソーシャルワーカーの情報が一部のスタッフに偏り、利用者紹介後の連携がスムーズにいかなかったり、属人化を招いてしまっていました。
課題③連携先に行ったことの効果が可視化されない
「空き時間に居宅や病院へあいさつ回りする」といった取り組みは実は多くのステーションで実践されていますが、「チラシを置いてくるだけになっている」「ついでの時に行こうと思ってそのままにしてしまった」などのお声をよくお聞きします。
連携先リストをスプレッドシートで作成するなどの声もよく聞かれましたが、作成するのに時間がかかったり、せっかくリストを作っても管理が続かず、中長期視点での分析が困難というのが実情のようでした。
さらに、こうした活動は記録・可視化されないため、訪問の合間にがんばってあいさつ回りをした現場スタッフがいても、評価に繋がりにくい状況がありました。
課題④現場のスタッフを巻き込みにくい
最後に「営業」という言葉の違和感から、現場スタッフの心理障壁が高いことも挙げられます。
地域のケアマネジャーや医療ソーシャルワーカーにとって、「どのようなスタッフがサービスを提供するのか」「利用者と繋いだ後、どのような連携が取れるのか」がわかることはとても心強い情報となります。しかし、訪問サービスを提供する現場の方々にとって「自社を売り込む」ような営業活動は普段の業務や専門性から乖離しているように感じられやすいものです。
さらに、在宅医療・介護業界での顧客は利用者であり、ケアマネジャーや医療ソーシャルワーカーは橋渡しを担う方々であるため、一般業界でいわれるような「営業活動」やケアマネジャーや医療ソーシャルワーカーを「顧客として扱う」ことは違和感を与えかねないと考えました。
これらの課題を踏まえ、訪問看護・介護ステーションに必要とされるのは「新規案件を獲得するための営業活動」ではなく「地域連携先の課題をアセスメントする連携活動」ととらえ、「ZEST RRM」という新サービスを立ち上げることにしました。何しろ、私たちの顧客はアセスメントの専門家なのです。
地域連携が強化されることで顧客の成長・安定につながり、在宅が叶えられる利用者が増え、暮らしやすい地域の実現につながること。これが私たちが顧客とともに作り上げたい未来の姿です。
新サービス「ZEST RRM」とは?
「地域連携先の課題をアセスメントする連携活動」を軸とした時、私たちはどうしても「CRM (Customer Relationship Management)」という言葉を使いたくありませんでした。
在宅医療・介護業界では「利用者」を中心に据えながら、ケアマネジャーや医療ソーシャルワーカーをはじめとする様々な専門職がひとつのチームとなって支援をおこなっています。そのため、協力し合う関係であるケアマネジャーや医療ソーシャルワーカーを「お客様」とするのは違和感があったのです。異業界の用語や考え方をそのまま押し付けるのではなく、業界の方々が大切にしてきた価値観を尊重しながら取り入れていただくことが重要だと考えました。
そこで、地域連携先の方々を「顧客」と捉えて営業するのではなく、「地域」との連携をマネジメントする在宅医療・介護業界特化の新サービスとして「RRM(Regional Relationship Management)」が生まれました。
業界特化だからできる「地域連携予定のレコメンド」
私たちが「ZEST RRM」で提供する価値は大きく3つあります。ひとつめは地域連携先への訪問を促す「地域連携予定のレコメンド」です。
連携強化するうえで重要なのは「いま会いに行くべき連携先に、タイミングを逃さず会いにいくこと」です。ZEST SCHEDULEで地域連携予定を作成すると、すでに登録されている利用者情報を元にいつ、誰が、どの連携先に会いに行くべきかをレコメンドします。また、距離の近いところほどおすすめされて表示されます。
業界特化だからできる「地域連携先の管理」
ふたつめは「地域連携先の管理」です。地域連携予定を作成すると、その時の様子を「連携活動」として登録できるようになります。文章は任意入力で、とにかく簡単・手軽に連携先の方から聞いた情報を記録できます。
利用者との橋渡しを担う地域連携先の方々はさまざまな課題を抱えています。たとえば、「心疾患に強いステーションを紹介したいが、過去に関わった実績がなく不安」「いつも紹介していた嚥下リハビリに強いステーションがあったが、言語聴覚士が離職してしまい困っている」などです。そうした地域連携先の方々のおかれた状況や困りごとを把握・社内共有することで、自社が提案すべきことが明確になり、目の前の地域連携先の方々の課題解決にとどまらず、その先にいる利用者やご家族を支えることに繋がります。
また、ゼストには居宅介護支援事業所や病院・クリニックのデータベースがあり、事業所から近い連携先を一括で有効化したり、その連携機関に所属するケアマネジャーや医療ソーシャルワーカー、医師や看護師といった関係者を簡単に追加できます。たとえば、「このケアマネジャーは密な連絡を好む」とか「このクリニックはオンコール番号は〇〇→〇〇→〇〇の順にかける」など細かやかな情報をすべて記録しておけます。利用者と紐付ければスマートフォンで訪問予定を確認する時に、連携先情報を手軽に確認できます。
業界特化だからできる「地域連携先のエンゲージメント状況の可視化」
BOARDではどういった地域連携先から紹介を受けているかはもちろん、接触数や課題発見率、解決率などを確認できるようになります。単純にチラシを置いてくる、会いに行くといった活動にとどまらず、地域連携先の課題を把握できたのか?その解決が紹介につながっているのか?を評価することで、連携活動の質を高めることに繋がります。
コンセプトは「顔の見える地域連携で、このまちの在宅を護ろう」
現場も主体者となった地域連携を推進するためには、訪問サービスを提供する方ひとりひとりがその必要性について納得できる必要があります。利益追求だけではなく在宅を叶えたい利用者にとって価値があることを伝えるため、ゼストでは「顔の見える地域連携でこのまちの在宅を護ろう」というコンセプトを掲げています。
自分たちにはどのような強みがあり、どのような方がケアするのか。「顔の見えるステーション」として自社が成長すれば「在宅を叶えられる利用者」が増えていきます。自分たちの届けたいケアを必要としている人に届けるためにも、「ZEST RRM」を活用し、地域のケアマネジャーや医療ソーシャルワーカーとの連携を強化いただけたらと考えています。
ゼストは在宅医療・介護業界で働く方々、そしてその先の利用者のためになるプロダクトをつくりつづけています。この記事を読んでちょっとでもゼストに興味を持たれたら、ぜひ一度、弊社のWantedlyをチェックしてみてください!