こんにちは。株式会社ゼストでプロダクトマネジメントを担当している川添です。
2023年6月21日、新プロダクト「ZEST BOARD」をリリースしました。
今回はこのプロダクトが生まれた背景や、開発ストーリーを振り返りたいと思います。実はこのZEST BOARD、社長やCROとエンジニアが膝を突き合わせて開発したプロダクト。どのように話し合い、開発を進めたのか?ぜひ読んでいただけると嬉しいです!
ZEST BOARDとは?
ZESTを利用されているお客様の予定データ・位置情報を活用して、経営指標として有効なデータを可視化できる経営ダッシュボードです。お客様は普段通りZESTを使い続けるだけで必要な指標を可視化できます。さらに、営業強化ポイントを明確化するために、サービス提供事業所の営業先である居宅看護支援事業所MAPも可視化します。 有料オプションであるにも関わらず、すでにお客様から続々とお申し込みをいただいています。ありがとうございます!
なぜ、経営指標の可視化なのか?
私たちは在宅医療・介護業界の「護りたい。その想いを護る。」をミッションに掲げています。具体的に言えば、お客様が理想とする医療・看護・介護を安定して利用者様に届けられる手助けをしたい、そのためにZESTによって時間を創出する支援を、その後、空き時間を共有するZEST MEETを提供してきました。なぜ、次の一手を経営指標の可視化に決めたのか。ZEST BOARDの発案者である社長の一色さんにインタビューしました。
「ZEST BOARD」が生まれた背景
- 経営ダッシュボードはいつ頃から構想があったのですか?
「ZESTをスケジュール作成ツールから脱却させる」という考えを、ゼストにジョインした昨年夏頃から持っていました。「スケジュールを効率的に作る」のは、あくまで手段でしかなく、私たちが本当に提供すべき価値は「より良い経営がおこなわれ、従業員満足度とその先の利用者満足度を高められる」ことです。そのためには非生産的な時間を短縮して生産的な時間を増やす改善が必要ですが、その内訳が目に見えない状態では改善のしようがありません。そこで、まず第一歩として経営指標を可視化するダッシュボードによって「移動時間とアイドルタイムに目を向けてもらう」ことを考えていました。
- 業界全体でDXが当たり前になっているわけではなく、「経営指標を可視化したい」という顧客ニーズが顕在化していない状況でした。今、開発に踏み切る判断ができた理由は?
1つ目は構想の段階で業界の方々にヒアリングすることで、移動時間とアイドルタイムの可視化には手応えを掴んでいたことです。
実際にお話を聞いてみると、経営者だけでなく職員の立場から見ても「訪問件数や訪問時間だけで評価されることへの不満」があったんです。というのも、近場を回る職員は訪問件数、訪問時間を伸ばせますが、遠方の利用者宅を割り当てられた職員は移動に時間がかかる分、訪問件数を増やすのが難しくなります。野球のホームランと送りバントのような関係で、どちらか一方ではダメでそれぞれが役割を果たすことが大切ですが、遠方の利用者を訪問する職員は評価されにくいのが現状です。また、同じ訪問時間でも入浴介助のように体力を必要とするサービス、ターミナルやお看取りのように精神的な負荷が大きなサービスもあります。
今はそれらがすべてブラックボックスなので、「可視化することで少しでも解決に繋がれば」という想いがありました。
それから、2つ目は心強い開発チームがいる安心感ですね。
実をいえば、この「ZEST BOARD」はこれほど早くリリースできると思っていませんでした。開発リソースは有限ですし、ゼロからの開発になるので1年以上は先になると思っていました。でも、ある時「いつかやりたいんですよ」とCTO豊島さんに話したら、techチームで検討してくれて「既存ツールを組み合わせれば意外と早く作れるかもしれない」と回答をいただいて。メイン開発者の宮原さんの素早いキャッチアップと実装力のおかげで、最終的にtechチームがたった3ヶ月でリリースしたのは本当に衝撃でした。
また、新しいプロダクトは常に手探り状態から始まるので、顧客フィードバックを元にPDCAを回すのが大前提になります。せっかく顧客に見ていただいて有益なフィードバックをいただいても、プロダクトに反映できなければプラスにならないどころか、ご協力いただいた顧客との関係性にも悪い影響が出かねません。その点、プロダクトに責任を持って開発してくれるメンバーに恵まれていることは、ゼストの強みのひとつでもあります。
リリースまでと今後について
- techチームの責任感、チームとしての一体感は本当に強いですよね。今回の「ZEST BOARD」は一色さんたちビジネスサイドの方々とエンジニアが直接議論しながら作り上げたプロダクトですが、どのように開発を進めていったのでしょうか?
私の方でリリース原稿の草案を書き、それを元にtechチームが開発してくれました。そして、開発したプロトタイプを協力してくださる顧客に見ていただき、リアルなフィードバックをいただいてブラッシュアップしていきました。「第1弾では難しいかもしれないですが」と伝えたフィードバックがどんどん形になるので、驚きの連続でしたね。
リリース後に顧客から喜ばれる機能の多くは、こうしたブラッシュアップの中で生まれたものだったので、スピード感のある対応をしていただけたのは大きかったなと思います。
- お客様からの反響はどうでしたか?
「ようやく業務負荷を定量化できた」という喜びの声や、チャレンジする姿勢を評価する声を多く頂いています。一方で、明確なリクエストもいただいているので、随時対応していきたいですね。
- 今後「ZEST BOARD」をどのように進化させていきたいですか?
今は「ZESTをスケジュール作成ツールから脱却させる」ためのスタートラインに立ったところですので、まだまだ進化の余地があると思っています。
在宅医療・介護業界は、ビジネスであり社会インフラでもあるという二面性を持っているが故に経営手法が浸透しきっていません。しかし、社会インフラであるからといって経営努力をしなくてもいいわけではありません。むしろ、他業界からの学びを取り入れてより良い経営をおこなうことでサステナブルな事業として成長させることが、最終的には職員と利用者の満足に繋がります。
業界全体で生産性を高められるようなプロダクトに進化させていきたいですね。
開発者インタビュー
メイン開発者の宮原さんに、開発の苦労話や得た経験についてインタビューしました!
開発の流れ
- どのような流れで開発を進めたのですか?
一色さんの構想をもとにデータベースの構造を確認しながら、できること・できないことの精査をおこないつつ、小さく開発しては確認してもらうといった進め方をしました。その後で、本格的な技術選定や全体のアーキテクティングをおこないました。リリーススピードにはこだわりたいと思っていたので、手戻りの少ない進め方を意識しました。
- 社長やCROなどビジネスサイドの方とすり合わせながらの開発でしたが、どうでしたか?
やりたいことが明確だったので、動くものを見せながらすり合わせるようにしました。要件やスケジュールにブレが出ないように週次定例の場を設けて随時連携しながら進めたのですが、慣れない在宅医療・介護業界の専門用語が飛び交うこともあり、質問しながら進めましたね。また、顧客にとって本当に使えるプロダクトにするため、時には議論が白熱したり、途中で仕様変更したりしながら詰めていきました。
大変だったこと
- ZEST BOARD開発にあたって、大変だったのはどういったことでしたか?
一番苦労したところでいうと、私は入社してまだ日が浅く、自社の既存システムのデータベース構造を学びながら開発しなければならなかった点です。ただし、単にテーブル構造を見て学ぶよりも、目的を持って実際に手を動かしながら学んでいったので、通常よりも早く学べたのではないかと考えています。
あとは、いくつかのサービスを組み合わせた構成になっているのですが、初めて使うサービスもあってチャレンジではありましたね。たとえば、データソースが複数あったため、自動でデータパイプラインを構築するサービスが必要で、5〜6サービスほど検討しました。GCPのサービスや、GUIベースの簡単な設定ですぐに使えるサービスなど様々あり、選定は割と大変でした。
参考:詳しい構成は宮原さんのブログ記事をぜひ!
成果と今後のこと
- 今回、うまくいったと感じることは?
「平常時であれば、メンテナンス工数がほとんどかからない」というのを実現できたことですね。でも、実はさらに運用工数を下げるための工夫を温めているところです。
- ちなみに、ZEST BOARDの由来は?
チームで話し合っていた時にいくつか候補があって。その中から一番しっくり来たものを選びました。
- 今後こうしていきたい、といったものはありますか?
実はお客様から利用申し込みがあった時の初期設定には改善の余地があるんです。ひとつのURLで、招待されたアカウントによって画面を出し分ける形でできるといいなと思っています。絶対そうしたい(笑)。
お客様の反響とメッセージ
- お客様からの反響を聞いてどう思いますか?
素直に、すごくありがたいです。リリースしてすぐに依頼がたくさん来て嬉しかったです。嬉しい反面、変なバグがないかハラハラしてしまうところもありますが…(笑)。
- 最後に、ZEST BOARDをご利用中のお客様へのメッセージをどうぞ!
ご利用いただき、ありがとうございます。期待に応えられるよう、より進化を続けていきたいです。ZEST BOARDが良くなれば、お客様も良くなる循環が描けると思うので、ぜひ一緒にがんばっていけたらと思います!
最後に
いかがだったでしょうか?在宅医療・介護業界は人材不足が叫ばれ、生産性を高めようにも課題も山積みです。顧客は、「人」にしかできない医療・介護サービスを提供する方々。だからこそ、システムが代われる業務はどんどん手放していただき、「利用者を護りたい」という想いを叶えるお手伝いができたらと思います。