ゼスト Tech Blog

ゼストは「護りたい。その想いを護る。」をミッションに、在宅医療・介護業界向けのSaaSを開発しています。

在宅医療・介護業界向けSaaS ユーザーインタビューのDOs / DON'Ts

こんにちは。「護りたい。その想いを護る。」株式会社ゼストのプロダクトマネージャーを担当している川添です。

ゼストでは顧客解像度を高めて本当に価値あるサービスを提供するため、多数のお客様と繰り返し対話させていただき課題や解決策を探り続けることを大切にしています。今回は、お話を聞かせていただく際に気をつけているポイントをご紹介します。

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事前準備

ただでさえ忙しいお客様に時間をいただくので、「協力してよかった」と思っていただけるよう事前準備にはしっかりと時間をかけます。

1. インタビューの目的を決める

まずはインタビューの目的を決めます。目的なくインタビューの場を設けてしまうと漠然と質問するだけになってしまい、参加したお客様にも「何の時間だったんだろう」と感じさせてしまいます。ゼストでおこなうユーザーインタビューの目的は大きく2つで、「業界について正しく理解するために答え合わせをさせていただく」または「プロダクトのアイデアや方向性(仮説)を検証する」のいずれかであることが多いです。

2. 目的に沿ったインタビュイーを選定する

インタビュイーの選定は目的を踏まえておこないます。業界について伺うなら幅広く理解されている方がいいでしょうし、プロダクトについて伺う場合は決済者と実際にプロダクトを利用する方々それぞれにお話を聞く必要があります。社内の経営陣や営業責任者に、どの方にお話を聞くのがいいか相談することも多いです。ヒアリング依頼は最も繋がりのある社内メンバーから打診してもらいます。

さらに、プロダクトに関して伺う時は満足いただいている方のお話だけでなく、厳しいお話の中にも重要なヒントがたくさん見つかります。相手の企業規模の大小でも課題や解決策は大きく異なります。

3. 社内の参加メンバーは5名までに絞る

社内の参加メンバーはプロダクトマネージャー単独の場合もありますが、techチーム、営業チームから参加してもらうこともあります。特に課題に関するお話を聞けそうな時にはデザイナー、エンジニアにも召集をかけます。また、必要に応じて営業チーム側の参加者を決めます。ただ、あまりに人数が多いと相手が話しづらくなったり、チーム全体の仕事が止まってしまうので、5名くらいで臨むことが多いです。参加メンバーが主体性を持つ意味でも人数が多過ぎない方がいいと考えています。

4. 業界に関する基本的な知識を学び、事前に社内共有する

基本的な知識がないと、お客様がせっかく示唆に富んだお話をしてくださっていても拾うことができません。また、何でもかんでも質問攻めするのはお客様にとっても負担となります。そのため、業界に関する基本的な知識についてあらかじめできる範囲で調べておき、参加者に共有しておきます。在宅医療・介護業界であれば、在宅を支えるステークホルダー、業態、保険や福祉制度の種類、業界の方々の業務フローと課題の概要を知っておくことが最低ラインになります。

5. 相手の課題と解決策の仮説を立てる

業界に関する基本的な知識をインストールした後で「ここ困ってるんじゃないかな」「これ辛いんじゃないかな」という課題の目星をつけておきます。このステップでのコツは「自分が相手の立場で仕事するとしたら、どういった部分が辛いか」という目線を持つことです。仮説を立てる上でのヒントになるのと、実際にインタビューの時に話を引き出すヒントになります。

気をつけていることとして、仮説は絞りすぎずに複数立てるようにしています。理由は、ひとつの答えにお客様を誘導してしまわないようにするため。それから、お客様の課題を多角的に捉えるためです。

6. 聞きたいことをまとめた資料を作る

ユーザーインタビューはZoomやGoogle Meetで実施することが多いので、画面共有して見ていただきやすい形でヒアリング内容をまとめます。Googleスライドは文字も読みやすく、画面のイメージなどを自由に貼り付けられるので重宝します。事前に相手に渡しておいた方がいい場合はWordでまとめたりもします。

ユーザーインタビュー当日

当日は質の高い情報をできるだけリアルに、正しく引き出すことに全力投球します。尋問のように感じさせない程度に、しかし、しっかりと深掘りするのがポイントです。

1. ユーザーインタビューの目的や背景を伝える

何のためにどういったことを聞きたいのか、どうして私たちがそれを知る必要があるのかを最初にきちんと説明します。インタビューにご協力いただくことで話した内容がどのように活かされ、それが結果的にどういったメリットに繋がるのかがわかると、高いモチベーションでご参加いただけます。逆に、「いただいた意見をそのまま反映する」というミスリードを生まないことも大切です。

2. 意見ではなく「事実」を立体的に捉える

ユーザーインタビューで引き出すのは「事実」です。この事実の中には「経験・体験」「思考プロセス」「行動」も含まれます。

たとえば、「こういう機能があったらいいと思う」といった意見が出た場合には、具体的にどんな機能かを深掘りするのではなく「なぜそう考えるのか?どういった課題があったのか?」「その課題を経験する頻度は?自社の全員がそう考えているのか?」「解決のためにどういった努力をしたか?」「何が原因で解決できていないか?」といった部分を深掘りしていきます。私たちが開発・デザインのプロフェッショナルとして最適なHowを見つけ出すためには、相手が抱えている課題や置かれている状況など正しい事実を把握しなければなりません。

また、より立体的に事実を把握するため、あえて相手が否定しそうな選択肢を投げかけたりもします。「Aである」という回答の奥には「Aであり、かつBでなければいけない」とか「Aである、しかしCではない」といった言語化されなかった意図が潜んでいることがあります。そのため「Aなんですね。Bではないのですよね?」「Cはどうですか?」と質問を重ねることで、解像度を高めていきます。

3. 誘導しない

ユーザーインタビューは相手の記憶にあるものを、そのままの形で、手触りが感じられるくらい解像度の高い状態で引き出すことに意味があります。せっかく直接お話を聞く機会をいただいているにもかかわらず、自分の仮説に沿うバイアスをかけては意味がありません。

そのために、クローズドクエスチョンよりも、オープンクエスチョンで始めることを心掛けます。また、相手が沈黙してしまったり、質問によっては背景の説明が必要な場合もありますが、一方的に話し過ぎないことも大切です。相手が自分の発言に流されているなと感じたら、「〇〇だけでなく××という場合もありますかね?」と反対意見を持ち出して軌道修正します。

4. ときどき整理して振り返る

相手にきちんと前提を伝えきれず、お互いが誤解したまま質問を重ねてしまう場合があります。そのため、要所要所で聞かせていただいた内容を要約して認識の差異がないか確認し、訂正いただく機会を作ることも重要です。また、バイアスがかかってしまった可能性や、矛盾があるように感じたら、時間をおいてもう一度同じ質問をしてみることもあります。

5. リアルタイムで記録する

ユーザーインタビューは数十分から1時間程度行うことが多く、得られる情報量が膨大です。可能なら録画させてもらったり、その場でメモしながら聞かせていただくようにしています。話をしながら同時に記録するのが難しい場合、突然黙り込んでしまうと相手も居心地が悪くなってしまうので、「とても大切なお考えを聞けたので、少しメモしてもいいですか?」とお声がけすると、快く了承していただけることが多いです。

ユーザーインタビュー後

ユーザインタビューは終わった後が何よりも重要です。

1. 速攻で言語化する

ユーザーインタビュー実施後は、できるだけ速やかに言語化します。特にWhyを取りこぼさずに記録しておきます。ゼストの場合はNotionにまとめています。

2. チームに共有する

ユーザーインタビューで聞いた内容は、プロダクトマネージャーの企画やアイデアのもとになるだけでなく、UI/UXにも、システムの振る舞いにも大きく関係します。そのため、ゼストではユーザーインタビュー結果をまとめたNotionをtechチームSlackで共有しています。また、重要なインサイトが得られた時には、個別で共有ミーティングを開いたり、チーム定例で「先日のユーザーインタビューで得られたフィードバックでこういうものがあって」と紹介します。

プロダクトマネージャーは顧客を一番に理解すべき役割ではありますが、「自分以外は顧客をあまり理解していない」という状況は危険です。プロダクト開発はチーム戦なので、ひとりひとりが主体性を持って顧客に向き合わなければ良いプロダクトは生まれません。その点、ゼストはいい話も悪い話も、営業もtechチームも顧客について知ったら「共有したい!」というモチベーションが高くて、私はとても好きです。

おまけ:困ったときの切り返し集

ユーザーインタビューをしている時に「困った!」と感じる瞬間について、思い当たる点と対処法を挙げてみました。参考になれば幸いです!

相手が沈黙してしまう

相手が答えにくくて詰まっている場合は、誘導にならないように注意しながら「Aですかね?Bですかね?」と複数の選択肢を提示して答えやすくします。ただ、相手が考え込んでいる場合は畳み掛けずに少し待ってみるのも大切です。

こうしてほしい!と要望や意見を伝えられた

「背景をお聞きしていいですか?」と断った上で、相手がそう思った理由を聞き出します。HowではなくWhy、意見ではなく事実を引き出すよう努力します。また、機能リクエストがあった時には、理由に加えて「それが有料オプションだとしたら、いくらくらい払ってもいいか?」「何があれば有料でもいいと考えるか?」を引き出しておくと、使われない機能を大量生産するのを防ぐヒントを得られます。

聞いた内容が矛盾している

質問を重ねていく中で矛盾していることに気づいたら、「先ほど伺った〇〇と今の××とで条件や前提が異なりますか?」と食い違う理由を引き出します。たいていは矛盾しているというよりも、前提が異なっている場合が多いと思います。

相手の言っていることがよくわからない

相手の考えが整理しきれていない時や、知識が不足していて理解が追いつかない場合は、Googleスライド上で図にしながらヒアリングしたり、参考画像を検索したりしながらヒアリングします。口頭だけの空中戦を始めるとお互いのイメージが乖離しやすいので、できるだけ言葉か目で見えるものに落とし込んでイメージをとらえます。

わからない専門用語は話の腰を折らないよう、こっそり手元のスマホで即検索します!

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